
堺打刃物の真髄は、堺の街全体での分業体制にあるといっても
過言ではありません。どんなにオールマイティな人間でも全ての
工程を極める事は不可能です。各工程を数十年と経験を積んだ
熟練の匠が技術の粋を集めて一本の包丁を作り上げます。
ここでは、その各工程でどのように堺打刃物の和包丁が
出来ていくかをご紹介いたします。
![]() 鍛冶職人 | ![]() 刃付職人 |
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![]() 問屋/柄付職人 | ![]() 銘切職人 |




鍛冶屋の作業工程
1.鋼付け
↓
2.先付け・切り落とし
↓
3.中子とり・成形
↓
4.焼鈍し(やきなまし)
↓
5.荒叩き・裏すき
↓
6.仕上げおろし・断ち回し
歪みとり
↓
7.摺り廻し
↓
8.泥塗り・焼き入れ
↓
9.焼き戻し・泥落とし
↓
10.歪みなおし

現代の大量生産の包丁ではなく、プロの世界で使われる包丁は一本一本手作りで行われています。
鍛冶屋で行われている作業は赤く熱した地金を叩き、鋼を接着するところから始まります。
この作業は鍛接と呼ばれ約900度に熱した材料を叩き上げ鍛えていく作業です。
また、叩きながらおおまかな包丁の形へ近づけていきます。
鍛接を終えると徐々に熱を冷ます焼鈍し(やきなまし)を行います。この間は鋼も柔らかいため形状を丁寧に仕上げていきます。
最後に焼き入れを行います。
約800度になった刃を、熱した色で見極め素早く水に入れます。職人の熟練した技と経験がものを言う工程です。
火に入れるタイミングなどは見た目と感覚だけで行いますが、ほぼ正確な温度で行われています。
この工程こそが包丁の質を決める重要な工程です。



研ぎ屋の作業工程
1.荒砥・歪みとり・平研ぎ
↓
2.バフあて・歪みとり
↓
3.タガネ入れ
↓
4.本研ぎ・刃ひき
↓
5・裏研ぎ・刃あて
↓
6.バフあて
↓
7.木砥あて・歪みとり
↓
8.ぼかし・小刃あわせ・水拭き
↓
9.油ひき

焼き入れ後の包丁は、刃付け職人の元に届けられます。
最初に行われるのは荒砥です。
和包丁は片刃が多く、片方(裏側)にのみ鋼がついています。その為、最初の工程の荒砥は表側から行います。厚みの調整や切刃の調整なども全て表から行い、鋼を極力減らさないように行います。
荒い砥石で形を整えていく中で、主に表を研ぐので次第に表側に歪んでいきます。その為、研いで、歪みを取りを繰り返し行っていきます。
その後バフをあてて、研ぎ中に出来た傷を細かくしていきます。
最後に手研ぎを行います。一番細かい砥石で一本一本人の手で研ぎあげていきます。錆び止めに油を塗り、柄付け職人へと送られます。



まっすぐ入ることだけでなく、重心のバランスや、いかに取れにくくするかが職人の腕の見せ所です。
また、刃を入れるときは柄の尻の部分を木槌で叩いていれます。
釘を打つイメージと逆の方法の為、初めて見る方は興味をもって見て頂くことが多い部分でもあります。
この工程を終え、いよいよお客様の元へ届けられます。
以上の、鍛冶・刃付け・柄付けをそれぞれの職人が分担して行う点が堺打刃物の重要な工程となります。
和包丁の最後の工程、柄付けです。
ここは問屋などで行われる工程です。
中子部分を熱して柄付けの準備をします。
柄屋が作る柄の穴と、鍛冶屋が作る中子は必ずしも同じサイズではないので、それにあわせて熱し方を変えていきます。
刃をまっすぐ入れることが重要な工程になりますので、常に確認しながらの作業となります。
これまでの刃の工程と違い中々目を引く工程ではありませんが、持ち手がついて初めて包丁として使える重要な工程です。



また、名入れをご指定頂くと、この段階で名入れする事となります。
折角の堺打刃物の和包丁です。一本一本職人の手作りで行われていますので、是非ご自身でお使いになる場合も、プレゼントとして贈られる場合も、世界に一本しかない証として是非ご利用ください。名前が入ると更に愛着がわきます。
包丁の最終工程、名入れ。
この時初めてブランド名を包丁に彫り込みます。
もちろん、職人の手彫りで御座います。
これまでご覧頂いた通り、堺の包丁は600年間の伝統を通し分業で行ってきております。
最後の工程で、ブランド名を彫る事により、どこが販売元となり責任を請け負うかという事を彫り込むのです。
